齋藤英樹研究室

スタッフ

  • 講師 齋藤英樹

研究内容

 物質は凝固点以下で固体になりますが,多くのものは結晶になります。ガラスなど非晶質固体になる方が普通のものもあります。結晶とは,原子や分子が三次元方向(上下・左右・前後)に周期的に規則正しく積み重なったもので,その最小の単位構造は10–9m程の仮想的な小さな箱(単位格子)で考えます。この小さな箱の中に原子や分子はきちんと決まった位置関係で配置していて,それを結晶構造と言います。その箱と同じものが非常に多数積み重なって出来たものが結晶です。物質はそれぞれ固有の結晶構造をもっています。
 物質の結晶構造は,X線回折という現象を使って実験で調べます。この実験法をX線結晶構造解析といいます。

 X線結晶構造解析によって物質の結晶構造が決まると,単位格子中の原子・分子の配置が分かり,右図の左のような図が描けます。配置と共に各原子の熱振動の様子も分かります。この絵では,原子の熱振動の様子(大きさと方向)を回転楕円体で表しています。水素原子の位置も決めることができて,実線と点線で示したところに結晶中の分子間の水素結合を確認できます。右図の右は,実際の空間的大きさで分子を表した図ですが,水素結合のところの距離が短い様子がはっきり分かります。

 左の図は,ある分子結晶を–123℃ と62℃ で結晶構造解析したもの(の構造の一部)で,図左側上下の熱振動を示す回転楕円体の大きさが異なり,温度を下げると熱振動が小さくなることが良く分かります。描かれている分子はジアザビシクロオクタン(Dabco)という分子で,この結晶中である別の分子と水素結合(O-H・・・N)で結びついた物質です。62℃ ではDabcoは向きが2つあります(図左側下)。これは、分子の向きが2つのどちらか単位構造ごとにバラバラで揃っていないということを意味しています。このような状態を無秩序構造といいます。

 なぜ物質の結晶構造を調べる必要があるのでしょうか。物質の結晶構造は,分子が分かっていてもそれがどのように積み重なって結晶になるかは,ほとんどの場合で予測ができないからです。物質の結晶構造を調べることで,珍しい構造や変化現象に出会うことができます。そして,固体(結晶)のいろいろな性質は,その結晶構造と密接に関係があります。光学的な性質・電気的性質・熱的性質などやさらに生命科学的な性質を研究していくときに,その構造の情報から考察することが必要になるからで,科学的に重要な知見であるのです。

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