高柳研究室

研究室教員

研究概要

コンピューターを使った化学

「化学」と聞くと,ビーカーやフラスコを使って実験するというイメージを思い浮かべると思いますが,私たちはコンピューターを使って,化学反応がなぜ,どのように起こるのかについて研究をしています.化学反応は,原子間の結合の組み換えととらえることができ,この組み換えは電子の動きによって引き起こされます.そのため電子の動きを記述する量子力学の方程式を解くことで,化学反応のメカニズムを分子レベルで理解することができます.また,極低温や超高圧,短寿命などの実験が難しい系や反応でも,コンピューターを使うと簡単に扱うことができます.

反応の様子を可視化する

ヘムタンパク質モデル内のFe2+イオンと
O2 の結合生成反応

(1) 生体内ではヘモグロビンなどのたんぱく
質が酸素運搬をしています.この酸素運搬で
必ず起こる酸素結合反応は,実は未解明な
部分が多く存在します.これは結合を生成す
る Fe2+と O2 それぞれで複数の状態が存在す
るためです.私たちはシミュレーションを用い
ることで,このメカニズムを明らかにしました.
(2) ヘリウムは低温においても固体になりません.この性質は量子力学を用いて初めて説明できます.このような液体状のヘリウムに原子や分子が取り込まれると,量子力学特有のふるまいをします.例えば,ヘリウムに取り込まれた銀原子を光で励起すると外側に飛び出す現象が実験で観測されています.私たちはこのような現象が起こる原因をコンピューターによって解き明かしました.

ヘリウムに囲まれた銀を励起した時のダイナミクス
SN1 反応の概略図

(3) 右図のような炭素の結合が組み変わる反応は,有機化学では SN1 反応と呼ばれていますが,そのメカニズムはよく分かっていません.私たちはコンピューターを駆使して,その反応メカニズムの解明に取り組みました.その結果,この反応は一方向に進行し続けるのではなく,途中で似た分子構造を行き来しながら起こることがわかりました.

タイトルとURLをコピーしました