前田・長嶋研究室

スタッフ

  • 准教授 前田公憲
  • 助教  長嶋宏樹

分子システムの磁気感受と電子スピン共鳴

 近年, 磁場を感じることが出来る動物が次々と見つかっています.それらの中に化学反応への磁場の量子効果を用いている事を示唆する状況証拠が見つかり,動物の磁気感受と量子力学の関連が語られる様になってきました.動物は地磁気という極めて弱い磁場(〜50 T程度)を, 生物が持つ複雑かつ精密なメカニズムにより, 感知していると考えられています.
 現時点で磁気感受センサーの有力候補として考えられているのはクリプトクロムと呼ばれるタンパク質です. 磁気感受能を解明するためには, (1) スピンと静磁場, 電磁波との相互作用機構, (2)クリプトクロムと磁場との相互作用と構造変化, (3) クリプトクロムの生体中における反応, の3つの理解が必要です.
 当研究室では磁気や電子スピンをキーワードにしてこれらの問題にアプローチします.当研究室ではクリプトクロムやモデル物質を対象として, 分光学的測定, 顕微観測, 電子スピン共鳴計測に取り組みます. 磁場や電磁場効果の観測手法は,生体分子系やそのモデル系のために特化し,チューニングしてゆきます.理論はスピンダイナミクス計算と分子動力学計算を融合し,極力現実的なモデルに近づけてゆきます.理論と実験の両面から研究を進め,理論のための実験,実験の為の理論を一つのグループ内で究める事で,世界に先駆けて, 動物の磁気感受能の理解に挑戦します.

研究内容

  1. 動物の磁気感受に関連した生体分子系の磁場効果の光学的(反応収率)検出磁気共鳴,顕微観測, スピン量子物理化学による解析
  2. スピンダイナミクスと分子動力学との相関の探索,量子効果の理解.
  3. 任意波形電磁波(ラジオ波, マイクロ波)によるスピンダイナミクスのコヒーレンス制御.
  4. さまざまな反応環境場における,フラビン系-タンパク質系の光化学とスピンダイナミクス解析.
  5. 時間分解電子スピン共鳴(time-resolved EPR)によるラジカル対構造解析.
  6. パルス EPRの高度化とDEER(電子-電子二重共鳴)によるタンパク質の構造解析.
  7. 生体分子系の磁場効果測定に特化した高感度過渡分光装置の製作
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