スタッフ
- 講師 佐藤 大
研究内容
①非ベンゼン系芳香族化合物の合成・反応・性質
ベンゼンやナフタレンは代表的な芳香族化合物です。一方,ベンゼン環以外の形(6角形以外)で芳香族性をもつものを非ベンゼン系芳香族(非ベンゼノイド)といいます。アズレン1などがこれに相当し,ベンゼノイドとは異なる特徴を有する興味深い化合物群です。
私達は,アズレンの骨格に硫黄原子を導入した化合物2や3を合成し,それらの反応性や誘導体の性質を調べています。2は1と単体硫黄の,3はトロポロンメチルエーテルとチオ尿素の反応からそれぞれ得られます。その中で,2の還元/(チオ)カルボニル化および縮合反応から4を,3とマロン酸ジメチルとの反応から5を合成することに成功し,それぞれの電子供与および電子受容能力を評価しました。
また,5-ブロモ-2-メトキシトロポン6の求核置換反応についても研究し,試薬の種類や反応条件によって置換位置(2-または5-位)が異なる,興味深い性質を明らかにしました。例えば,6とアミン類との反応ではメトキシ基が置換された2-窒素置換体が生成するのに対して,チオール類ではブロモ基が置換された5-硫黄置換体が生じます。これにより,様々なトロポノイド誘導体を位置選択的につくり分けることが出来るようになりました。
②アミノトロポンイミン系デンドリマーの合成と性質
規則正しい枝分かれ構造(世代)をもつデンドリマーは,分子一つで明確な空間形態をつくることができる,注目される化合物です。
アミノトロポンイミン(ATI)系デンドリマー7のATI部は,様々な遷移金属イオンへの配位能を有しています。また,中心硫黄原子部分をカルコゲニド金属クラスターに組み込むこともできます。これらの特性を生かして誘導した金属錯体の機能性には興味が持たれます。
7を構築するには,メルカプト基を持つアミノトロポンイミン11の合成法を開発しなければなりません。トロポロンをカンファースルホン酸/エチレングリコールで処理して生じるトロピリウムカチオンに対してアミン類を反応させると,アミノトロポンイミン8が効率的に生成することを見出しました。8を位置選択的に臭素化(9),チオアセチル化(10)した後,過溶媒分解することでチオール11へ導くことができました。11に対してパラジウムを用いたカップリング反応を行うことで,ATI系デンドリマー7(第一世代)の合成に成功しました。