Takayanagi Lab.
Research
生体分子の放射線損傷
● 生体分子の放射線損傷の今まで
今まで、生体分子の放射線損傷は直接放射線が生体分子に当たることにより生じていると考えられていました。しかし、最近もっと小さなエネルギー状態の二次電子(図1)によっても生じていることが分かってきました。二次電子は放射線が一回照射される毎に約10000個も生成されるので、二次電子と生体分子の反応は放射線損傷にとって非常に重要になってくると考えられます(実際に私達が注目している反応は二次電子は体内に豊富に存在する水分子によって水和された状態(水和電子)と生体分子との反応です)。
しかし、この反応に関しては多くの実験や理論研究がなされているにもかかわらず、どんな反応機構をたどるのか、またどんな安定構造をとるのか等未だにわからないことが多くあります。そこで、私たちは放射線損傷についての理解を深めるため、水和電子を含む分子クラスターの研究を行っています。
● 水和電子を含む分子クラスターとは?
例えばNaClが水に溶けた際、Na+やCl-が水分子に囲まれることを水和と言いますが、水和電子はそのNa+やCl-が負に帯電している電子に置き換わったものを指します(図2)。また、クラスターとは有限個の分子からなる分子の集団のことで、例えば私達はニトロメタン1分子と水6分子のクラスターについての研究を行っています(図3)。