Takayanagi Lab.
Research
生命の起源の探索
● 生物の謎
生物にはまだまだ未解明なことが多く存在します。例えば、生体内でのタンパク質の働き、DNAの二重らせん構造、またアミノ酸のD体 / L体の選択性などが挙げられます。
これらの疑問をさかのぼれば「生物がどのように生まれたのか」という疑問に行き着きます。つまりそれらを作る分子であるアミノ酸や核酸などのミクロな領域を解明することがマクロな領域を知ることにつながるのです。
● 生物の部品はどこで生じたのか?
これらの謎を解くヒントがなんと宇宙で発見されました。暗黒星雲と呼ばれる光の届かない領域を電波望遠鏡で観測したところ、アミノ酸のもとになるアミノアセトニトリルという分子が観測されたのです。ちなみに、このような領域にある分子を星間分子と言います。
この発見もありアミノ酸が宇宙空間でできるのではないかと考えられるようになりました。一方で、各国が共同でALMA Project を立ち上げ星間分子のより詳しい観測を行っています。アミノ酸の発見も遠くないかもしれないですね。
● アミノアセトニトリルはどう生じるか?
宇宙空間でアミノ酸ができる過程はこのアミノアセトニトリルを通ってできる可能性があります。しかし、このアミノアセトニトリルがアミノ酸になる過程は分かっていない上、アミノアセトニトリル自体ができる過程すらわかっていません。当然、アミノアセトニトリルのできる過程を解明しなければアミノ酸がどう生じるかはわからないのです。
なぜ、それらの過程を知るのは難しいのでしょうか。これは分子ができる組み合わせや立体的な構造の変化、別の言葉で言えば「反応経路」が数多く考えられるからです。
● アミノアセトニトリルのできる反応経路
理想は存在する反応経路をすべて見つけて、どの反応が起こりやすいかを評価するだけなのですが、反応経路というのは数多く存在しそれらすべてを網羅するというのは非常に困難です・・・
しかし、GRRMを用いれば、その経路をすべて見つけ起こりうる反応経路を決定することができます。現在は計算を行っている途中ですが既にいくつかの経路が得られています。
下の図はCH2NHとCNHのエネルギーを0kcal / mol としたときの相対的なエネルギー変化を示した図で右に行くほど反応が進んでいます。青い丸は反応が進行するために越えなければならないエネルギーの壁で、この高さが低いほど反応しやすくなります。
この図では、赤線で示した反応経路を進みやすいと考えられます。また黒い点線の部分はまだ見つかっていない経路で計算が進めば明らかになります。
● 将来的には…
アミノアセトニトリルができるのならアミノ酸や核酸、リボースといった分子はどうなんだろう?と疑問が生まれます。この研究を応用すればそれらの分子ができた過程も明らかになることでしょう。このミクロな領域からのアプローチから生物の起源を明らかにできるかもしれません。